日韓・男女共同参画のまちづくりフォーラム実施報告
「女性にやさしいまちづくりは、人にやさしいまちづくり」

午後の部 事例発表とパネルディスカッション 13時10分〜16時

女性にやさしいまちづくり取組み事例〜「実践」から「評価」まで、そして「未来」に向けて〜

フォーラムの様子の写真

平成22年7月17日 土曜日  クレオ大阪中央・セミナーホール
主催 大阪市、(財)大阪市女性協会 共催 大阪市地域女性団体協議会、ソウル市女性家族財団

パネリストのみなさんからの発言の要旨は次のとおりです。

ムン・ウニョンさん (ソウル市女性家族財団研究員)

ムン・ウニョンさんの写真私の方からはプロジェクトにおける施設に対する認証、評価についてお話ししたいと思います。女幸プロジェクトが「国連公共サービス賞」をいただいたのは、その成果というよりは実践と戦略、努力に対する評価であったと認識しております。

プロジェクトの実践の過程で難しかった点は、まずこの概念自体がなかったこと。前例がない、専門家がいない、各部署の理解不足。そして総括者、総括する部署の力が足りないという問題点がありました。女幸プロジェクトはソウル市の女性家族省が主体となったのですが、区に推進母体がつくられていきました。

「女幸同伴者」は専門家で市から推薦された人々で、プロシューマーは公募し、選抜過程を経て選ばれた人たちでした。専門家である女幸同伴者の人たちがマニュアルを開発した主体でしたが、現場においてどんな不便があるかを点検する作業はプロシューマーと呼ばれる人たちによって行われていきました。

認証評価は、先ほどご紹介した5つの領域のうち、「便利なソウル」「安全なソウル」がその対象となります。駐車場やトイレのような女性が使う施設について評価するものです。基礎的な作業は女幸プロジェクトのマニュアルをつくることでした。

このマニュアルにおけるキーワードはCOSYですが、利便性、配慮、安全、快適の頭文字をとってつくったものです。
クレオ大阪中央の「韓国語で読む韓国女性事情」を受講している方たちが、専門用語が多く難しいこのマニュアルの翻訳作業をされていると聞いて、本当に感動しました。

例えば必須項目として、女性にやさしいトイレの場合では、女性用の便器の数がいくつ以上確保されなければならない、子ども用の設備、清潔な空間の確保となっています。

女性にやさしい駐車場は、女性優先駐車面が確保されているか、それが出入り口に近いかなどの項目で構成されています。ここで注意しなければならないのは、女性専用でなく女性優先駐車場です。老人と女性がいればどちらが先に優先されるかという質問を受けます。それは当然、老人、弱者が優先されます。

認証の手続きとしては、認証申請書の受付、現場での調査、そして認証推進委員会の審議を経て認証となります。認証された施設には認証書の授与が行われ、認証票が渡されます。認証評価は2009年から2010年に4回実施されました。認証によって、施設がよくなったかという問いに対しては当然よくなったと言えます。

トイレや駐車場、道なども新しく建てる時はもちろん、リモデリングする場合も認証基準に合ったもので行われています。問題は維持管理です。最近ソウル市に女幸プロジェクトによって認証された施設に管理、維持がされていないという問題提起がなされました。実態調査の結果、必須項目は70%、選択項目に関しては60%が維持管理されているとの結果が出ています。

この女幸プロジェクトは現在進行中であり、今後もその努力が必要だと言えます。

苫名 正さん (株式会社竹中工務店営業本部専門役)

苫名正さんの写真弊社が手掛けた梅田センタービルの設計にあたっては、働く女性の過ごしやすさを重視しました。そのため大阪の中心オフィス街である本町の女性従業員100人にアンケートと、10名程度のグループ討議を実施しました。女性にとってトイレは単に用を足すだけでなく、化粧をする場でもあったので、パウダールームを設置しました。今では当たり前のようになっていますが、当時はたいへん画期的な設備で多くのゼネコンが注目し、全国から見学に訪れたのですよ。さらに明るい、きれい、臭わないスペースであることも追求しました。また、給湯室については誰もが気軽に使えるスペースとしました。

吉村八重子さん (大阪市地域女性団体協議会外部リンク会長、大阪市男女共同参画審議会委員)

吉村八重子さんの写真子どもを守る母の像をデザインした「みおつくしの鐘外部リンクは女性会の活動の象徴です。ドメスティック・バイオレンスの防止と被害者保護と自立支援のための「夕陽丘基金外部リンクにも賛同し、基金への寄付や、クレオ大阪フェスタでのチャリティバザーの開催、女性がよく訪れる場所へのDV相談カードの設置など、女性が過ごしやすいまちづくりに向けてさまざまな事業に取り組んでいます。

杉本 佳英 (大阪市市民局長)

杉本佳英市民局長の写真「大阪市男女共同参画基本計画−大阪市男女きらめき計画−」外部リンクに基づき、「大阪(市)に住もう、大阪(市)で働こう、大阪(市)へ行こう」と思える魅力的なまちづくりをめざしています。公共施設等の多目的トイレ、託児できる場所、地下鉄駅舎のエレベーター・エスカレーターの設置などの設備の整備と、待機児童の解消、子育て・両立支援携帯メールマガジン「私も子どもも育(はぐく)メール外部リンク」の配信、青色防犯パトロールなど、行政サービスの充実をハードとソフトの両面から引き続き進めていきます。

槇村 久子 (クレオ大阪研究室長、京都女子大学教授)

槇村久子クレオ大阪研究室長の写真「男女共同参画のまちづくり」調査研究報告(平成20年度)PDFへのリンクにおいて、女性の社会参画の進展と、「住居」「職場」「まち」の施設や設備などのハードの変化は関係性があることを明らかにしています。都市計画を含むあらゆる社会の場面で男女共同参画のまちづくりをめざすことが大切です。

竹村登茂子コーディネーターの写真コーディネーターの竹村 登茂子さん(読売新聞大阪本社広報宣伝部長、大阪市男女共同参画審議会委員) の 「ソウル市の事例報告であったように、プロジェクト参加者が、参加することを誇りにしているように、私たちも、それぞれが誇りを持って自分がまちをかえていく、私たちもまちづくりのプロセスに関わることが、もっといいまちになっていく。」とのコメントにより締めくくられました。

(大阪市女性協会の責任で編集しました。)

研究室

研究テーマ・報告

  • 平成26年度
    ・女性の活躍推進に対する男女就業者の意識調査
  • 平成25年度
    ・男女共同参画に関する市民意識調査
  • 平成23年度
    ・企業における「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」への取組み実態調査研究
    ・地域における男女共同参画の課題解決支援プログラムに関する調査研究
  • 平成22年度
    ・就労に関する市民意識・実態調査
    ・子育て中のパパ・ママにやさしいまちづくりを考える調査研究
    ・日韓・男女共同参画のまちづくりフォーラム報告
  • 平成21年度
    ・20〜30 代働く男性の男女共同参画に関する意識と実態
    ・韓国・ソウル市「女性が幸せな都市」プロジェクトとガイドライン(評価指標)報告
  • 平成20年度
    ・男女共同参画のまちづくり 〜女性の社会参画と「住む」「働く」「行く」のハードに関する都市の変化〜
    ・男女共同参画に関する市民意識調査・男女共同参画に関する市民意識調査